冬が深まるにつれて「保湿クリームを塗っても塗っても、肌がカサカサする……」と悩む方は少なくありません。実はそのしつこい乾燥肌、単なる空気の乾燥だけが原因ではないかもしれません。
最新の医学研究では、冬の乾燥肌(皮膚乾燥症)と、腎臓や肝臓といった「内臓の健康状態」には深い関わりがあることが分かってきました 。本記事では、当院院長の監修のもと、最新のエビデンスに基づいた「体の内側から乾燥肌をケアする考え方」を分かりやすく解説します。
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冬の乾燥肌と「内臓の疲れ」の意外な関係
「肌は内臓を映す鏡」という言葉がありますが、これは単なる経験則ではありません。医学的にも、治りにくい乾燥肌の背景には、全身のバランス(恒常性)の乱れや、特定の臓器の機能低下が隠れていることが確実視されています 。
特に、以下のような臓器の「疲れ」や不調が、肌のバリア機能に影響を与えることが証明されています。
- 腎臓の機能低下: 腎臓が十分に働かないと、体内に老廃物(尿毒素)が溜まったり、肌の水分を守るタンパク質(アクアポリン3)が減ったりして、強い乾燥とかゆみを引き起こします 。
- 肝臓の不調: 肝臓は脂質の代謝を司っています。肝機能が低下すると、肌の潤いを保つ「セラミド」が正しく作られなくなることがあります 。
- 腸内環境の乱れ: 「腸皮膚軸」と呼ばれ、腸内の細菌が作る物質が血流に乗って皮膚に届き、肌のバリア機能を調節している可能性が示唆されています 。

なぜ冬になると症状がひどくなるのか?
冬は低湿度という過酷な環境ストレスが加わります 。健康な肌であれば耐えられても、内臓の疲れによって「自ら潤う力」が弱まっていると、一気に乾燥が進んでしまいます。
また、最新の研究では、冬の乾燥肌では「コルネオデスモソーム」という、古い角質を剥がれやすくする接着構造の分解がうまくいかなくなることが分かっています 。その結果、古い角質が肌に残り続け、あの独特の「ガサガサ・ザラザラ感」が続いてしまうのです 。
医師が推奨する「内外ハイブリッド」な対策法
外側からの保湿だけでは追いつかない場合、体の内側へのアプローチを組み合わせることが大切です。
1. 外側からのケア:弱酸性と保湿の徹底
基本は「肌のバリアを壊さない」ことです。
- 洗浄: 洗浄力の強すぎる石鹸を避け、肌と同じ「弱酸性」の洗浄料を選びましょう 。
- 保湿成分: セラミド、尿素、グリセリン、ワセリンなどが配合された保湿剤を、お風呂上がりにすぐ塗るのが効果的です 。
2. 内側からのケア:栄養とサプリメント
- 腸内環境を整える: プロバイオティクス(善玉菌)の摂取が、肌の水分蒸散を抑えるというデータがあります 。
- ビタミンDの補給: 冬は日光を浴びる機会が減り、ビタミンDが不足しがちです。これが肌のバリア機能を弱める一因となるため、食事やサプリでの補填が有効です 。
- 注目の成分: 小規模な研究ではありますが、プラセンタエキスの摂取が冬の肌状態を改善したという報告もあります 。
よくある質問(Q&A)
A. 加齢も一因ですが、それだけではありません。高齢の方の乾燥の多くは、実は水分不足(脱水)や、飲んでいるお薬の影響、微量な栄養素の欠乏などが関係しています 。これらを適切に管理することで、乾燥を和らげることは十分に可能です。
A. 保湿ケアを続けても全く改善しない、あるいは全身に強いかゆみがある場合は、受診をおすすめします。日本皮膚科学会のガイドラインでも、難治性の乾燥肌には血液検査などで内科的な原因を調べることが推奨されています 。
A. 腸内環境を整える発酵食品や食物繊維、バリア機能をサポートするビタミン類を意識しましょう。単なる「疲れ」だと思っていたものが、内科的な疾患のサインであることもありますので、バランスの良い食生活が基本となります 。
A. まずは皮膚科の受診をおすすめします。ただし、保湿剤で改善しない難治性の場合は、内臓疾患の兆候を確認するために血液検査などを行うこともあります。当院のように内科的な視点を持つクリニックへ相談するのも一つの手です。
A. バリア機能が低下し続けると、強いかゆみや湿疹(皮脂欠乏性湿疹)に発展したり、外部の刺激に過敏な「敏感肌」が定着したりします。また、ごく稀に重大な内科疾患の初期サインを見逃してしまうリスクもあります。
A. はい、最新の医学研究(腸皮膚軸)において、腸内細菌が作る成分が肌のバリア機能(TEWL:経皮水分蒸散量)を改善するエビデンスが示されつつあります。プロバイオティクスの摂取などは有効なアプローチの一つです。
まとめ
冬のしつこい乾燥肌は、皮膚だけの問題ではなく、私たちの体が発している「内臓の疲れ」のサインかもしれません 。
「たかが乾燥肌」と放置せず、外側からの正しい保湿と、内側からの健康管理をセットで行っていきましょう。もし不安な症状が続く場合は、一度当院までお気軽にご相談ください。
監修:あおぞらクリニック 院長 医師
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- Simon, M. et al. (2001). Persistence of both peripheral and non-peripheral corneodesmosomes in the upper stratum corneum of winter xerosis skin. J Invest Dermatol, 116.
【医学的エビデンスの位置づけ】
本記事でご紹介した内容は、現在の医学研究では ★★★★☆「比較的信頼性の高い情報」と位置づけられています。
冬の乾燥肌と全身疾患(腎・肝機能など)の相関については複数の研究で強い関連が報告されていますが、「日常的な一時的な疲れ」がどの程度肌に影響するかについては個人差も大きく、さらなる検証が待たれる部分もあります。症状が長引く場合は、自己判断せず医師にご相談ください。







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