冬場、家庭で血圧を測っていて「夏よりも数値が高いな」と感じたことはありませんか?実は、寒くなる時期に血圧が上昇し、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患(CVD)のリスクが高まることは、多くの医学研究によって証明された「確実な事実」です 。
本記事では、当院院長の監修のもと、最新の信頼できる研究データ(エビデンス)に基づき、なぜ冬に血圧が上がるのか、そして健康を守るために今日からできる対策を分かりやすく解説します。
目次 | Contents
1. 冬に血圧が上がる「納得の理由」
冬の血圧上昇は、単なる気のせいではありません。大規模な分析(約85万人を対象とした調査)によると、冬の血圧は夏に比べて、上の血圧(収縮期)が約5〜6mmHg、下の血圧(拡張期)が約3mmHgほど高くなることが分かっています 。
なぜ体が反応するのか?
私たちの体は、寒さを感じると熱を逃がさないように血管をギュッと収縮させます。これは交感神経の活性化(ノルエピネフリンの上昇)や、血圧に関わるホルモン(アルドステロンなど)の増加による生理的な反応です 。
特に注意が必要なポイントは以下の通りです。
- 「外の寒さ」より「部屋の寒さ」が重要:外気温よりも、過ごしている室内温度が血圧に強く影響します。室温が1℃下がるごとに、高齢者では血圧が0.22mmHg上昇するという報告もあります 。
- 喫煙の影響:タバコを吸う方は、吸わない方に比べて冬場の血圧上昇幅が大きくなる(約7.3mmHgの上昇)ことが確認されています 。
- 心の状態:最新の研究では、うつ症状がある方は、寒さに対して血圧がより敏感に上がりやすい可能性も示唆されています 。

2. 「家の暖かさ」が最高の薬になる?
近年の研究で最も注目されているのが、住環境の整備です。日本の調査でも、家の断熱改修をして室温を上げると、起床時の血圧が明らかに下がることが証明されています(高血圧の方では平均7.7mmHgの低下) 。
意識したい「18℃」の壁
WHO(世界保健機関)は、冬の室内温度を18℃以上に保つことを強く推奨しています 。暖房のない部屋では心血管疾患による死亡リスクが41%も高まるというデータもありますが、セントラルヒーティングなどで家全体を暖めることで、この季節による血圧の差はほとんどなくなることも分かっています 。
お風呂の「ヒートショック」対策
脱衣所と浴室の急激な温度差は、血圧の乱高下を招きます。
- お湯の温度は41℃以下に設定しましょう 。
- 42℃以上の熱いお湯は、血栓(血の塊)を作るリスクを高めるため注意が必要です 。
3. お薬の調整とこれからの治療
冬場に血圧が高くなるからといって、自己判断でお薬の量を変えるのは危険です。
医師による「季節の微調整」
欧州高血圧学会などの専門機関では、冬場に血圧が上がりやすい患者さんに対して、家庭血圧のデータに基づき「冬の間だけお薬を少し増やす」といった微調整(Titration)を行うことが合理的であるとしています 。春先に血圧が下がりすぎてふらつくリスクも考慮し、医師と相談しながら最適な量を決めていくことが大切です 。
デジタル技術の活用
最近では、高血圧治療用アプリなどのデジタル技術(DTx)が、高齢者の方でも朝の血圧を下げる効果があることが実証され始めています 。今後は気象予報と連携して、血圧が上がりそうな日を予測するような個別ケアも期待されています。
よくある質問(Q&A)
A. はい、減塩は非常に有効です。塩分を控えることで血圧を3〜7mmHg程度下げる効果が期待でき、冬場の血圧上昇を抑える助けになります 。また、有酸素運動も有効ですが、寒い早朝の屋外運動は避け、暖かい室内や日中に行うようにしましょう。
A. ビタミンDが不足している方には効果がある(レベルB)とされていますが、足りている方が追加で飲んでもさらなる降圧効果は期待できないという研究結果が出ています 。まずは食事や日光浴を意識しましょう。
A. 医学的なメリット(血圧の安定や病気予防)は非常に大きいですが、経済的な負担も無視できません。まずは「寝室」や「リビング」など、長時間過ごす場所を優先的に18℃以上に保つことから始めてみてください。
冬場に血圧が著しく上がる場合、医師の判断で一時的に薬の量を微調整することがあります。自己判断で調整せず、まずは家庭での血圧を記録して医師に相談してください。
寒さによる血管の収縮は体の正常な反応ですが、冬場は平均で5〜6mmHg程度血圧が上昇することが研究で分かっています。この変動は心筋梗塞などのリスクを高めるため、室内を18℃以上に保つなどの対策が重要です。
まとめ:冬の血圧管理は「モニタリング」から
冬の血圧上昇は誰にでも起こりうる普遍的な現象です 。大切なのは、毎日決まった時間に家庭で血圧を測り、自分の変化を知ることです。
「冬だけ血圧が高い」「家が寒くて不安」といったお悩みがあれば、ぜひ当院へご相談ください。本記事は当院院長の監修のもと、信頼性の高い情報をもとに作成しています。お一人おひとりの生活環境に合わせた最適な治療・対策を一緒に考えていきましょう。
【医学的エビデンスの位置づけ】
本記事でご紹介した内容は、現在の医学研究では
★★★★★「非常に信頼性の高い情報」と位置づけられています。
特に冬の血圧上昇については、85万人規模の膨大なデータに基づき科学的に確立されています 。また、室内温度と血圧の関係についても、日本を含む複数の国で大規模な調査が行われ、因果関係が証明されています 。
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- Okumura K, et al. J Hypertens. 2022;40:2013-2021.
- Okumura et al. (2022): うつ症状が寒冷時の血圧感受性を高める可能性 。
監修:あおぞらクリニック 院長 医師







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